ハクビシンとアライグマの糞の違い|自治体の資料をもとに比べる
この記事のまとめ
- 農林水産省の資料では、ハクビシンの糞は棒状でねぐらなどにため糞をし、アライグマの糞は食べたもので泥状から固形まで変わり、ため糞はしないとされています。
- 同じ資料も環境省の手引きも、糞の形はエサや時期で変わるので、糞だけで見分けるのは難しいと書いています。
- アライグマの糞にはアライグマ回虫の卵が含まれることがあり、人が卵を口にすると重い症状につながります。この卵には薬剤がほとんど効かず、煮沸や焼却などの高温だけが有効とされています。
- 神戸市のチラシは、素手でふれず、糞尿を処理するときはマスクやゴム手袋を着け、作業後は手をよく洗うよう呼びかけています。
- 糞は足跡・姿・侵入した場所と合わせて判断し、写真を撮って市区町村の窓口に伝えます。ハクビシンもアライグマも、許可なく捕まえることはできません。
ハクビシンとアライグマの糞は、今回確かめた公的な資料に書かれた違いが「ため糞をするか」と「形」の2点だけで、糞だけで見分けるのは難しい、というのが答えです。農林水産省の資料では、ハクビシンの糞は棒状でねぐらなどにため糞をし、アライグマの糞は食べたものによって泥状から固形まで変わり、ため糞はしないとされています。ただし同じ資料が、糞の形はエサや時期でさまざまに変わるので識別は難しいと断っています。
この記事では、糞を見つけたときに先に守ることを書き、そのあとで資料ごとの違い、糞以外の手がかり、窓口に伝えることを順に整理します。屋根裏の足音や音から動物を探る話は、屋根裏の足音はハクビシン?ネズミ?音・時間帯・糞で見分ける方法に書いたので、ここでは重ねません。
先に:糞を見つけたら、さわる前に
見分けより先に、衛生の注意です。公式の資料で確かめられた内容だけを書きます。
- 素手でさわらない。 神戸市のチラシは、アライグマには素手でふれず、糞尿を処理するときはマスクやゴム手袋を着けて、作業後は手をよく洗うよう書いています。
- アライグマの糞には、アライグマ回虫の卵が含まれることがある。 東京都の資料では、卵を含む糞で汚染された土壌などを口から取り込むと感染します。症状は、中枢神経系に移ると髄膜脳炎、眼球に移ると網膜炎で、視力障害や失明を引き起こすと書かれています。なお、国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイトによると、国内では人への感染事例はこれまで報告されていません。
- この卵には薬剤がほとんど効かない。 国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイトは、虫卵の処理には煮沸や焼却などの高温が有効で、薬剤による不活化はほとんど効果がないとしています。同じページは、野生化したアライグマには直接さわらず、糞をする場所に近づかないよう注意しています。
- 糞に関わる感染症はほかにもある。 東京都の資料には、サルモネラやカンピロバクターなど、動物の糞が感染源になる場合があるものが並びます。ハクビシンもアライグマも、複数の人獣共通感染症を媒介する可能性があると東京都のページに書かれています。
なお、ハクビシンの天井裏について、酒田市は糞尿の被害があった場合は天井裏などの消毒を勧めています。一方、アライグマ回虫の卵には薬剤がほとんど効かないと上の資料にあります。どの動物かが決まらないうちは、片付けの方法を自分で決め切らず、市区町村の窓口に確かめてから進めると迷わずに済みます。糞の捨て方(燃えるごみに出せるかなど)は、今回確かめた公式資料には書かれていなかったため、ここでは扱いません。
資料に書かれた糞の違い
農林水産省の資料(中型獣対策の基本)は、アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマの糞の特徴を並べています。
| 動物 | 糞の形 | ため糞 |
|---|---|---|
| ハクビシン | 典型的な形は棒状 | ねぐらなどにする。よく使う通路上の側溝や溜まり水の中にもする |
| アライグマ | 食べたエサで泥状から固形まで、形も色も変わる | しない |
| タヌキ | 形は食べたものによる。色は比較的黒い | 畑や竹林、庭に比較的大きなため糞をする |
| アナグマ | 棒状で表面がテカテカしている | 小規模なため糞をする |
ハクビシンの「ため糞」については、ほかの自治体の資料も同じ方向です。世田谷区のリーフレットは、天井裏に入って同じ場所に糞尿をするのが被害例で、天井が腐って抜けることがあると書き、酒田市は、同じ場所に糞尿をするので天井板が変色してシミになると説明しています。港区のチラシも、被害の目安として「雨どいやベランダの一角にまとまって何かのフンがある」を挙げています。
糞の長さや太さの数字は、ここでは載せません。今回確かめた農林水産省・環境省・東京都・各自治体の資料に、ハクビシンとアライグマの糞の大きさを比べた数字が見つからなかったためです。環境省の手引きで糞の大きさにふれているのは1か所だけで、屋根裏に直径2cm以上のイヌのような糞があれば、アライグマかハクビシンの可能性が高い、というものです。つまり、2種を分ける数字ではなく、「この2種に絞れる」目安です。
糞だけで決められない理由
資料は揃って、糞だけの判断を戒めています。
- 農林水産省:足跡や糞の形はあくまで目安で、食害の痕やセンサーカメラの映像も踏まえて総合的に判断する。ある獣種の痕跡を見つけると、背後にいる別の獣種を見逃すことがあるので注意する
- 環境省(近畿の手引き):糞だけでアライグマを判別するのは困難。屋根裏に多数の糞があるとき、入り込める動物はアライグマのほか、イタチ、テン、ムササビ、ハクビシンなどがある
つまり、棒状の糞があってため糞に見えても、「ハクビシンで確定」とは言えません。逆に、泥状で散らばっていても「アライグマ」とは決まりません。糞は、動物の候補を絞る材料の1つです。
糞以外の手がかりで補う
糞に、次の手がかりを重ねると、絞り込みが進みます。
| 手がかり | ハクビシン | アライグマ |
|---|---|---|
| 足跡(農林水産省) | 丸い手のひらに短い5本指。多くの場合、爪の跡は付かない | 指が長く5本がはっきり分かれ、人の手形に似る。指先に爪の跡が残ることが多い |
| 顔・体(東京都の見分け方、港区) | 額から鼻にかけて白い筋。尾が長く、体の長さとほぼ同じ | 目の周りが黒い。尾に黒いリング状の縞がある |
| 食害(農林水産省) | スイカは顔を突っ込んで食べるため穴が大きくなる | スイカは直径5〜6cmの穴を開け、前足で中身をくりぬく。この痕跡はアライグマだけ |
| ふるまい | 夜行性で木登りが得意(港区) | 夜行性で木登りも泳ぎも得意。ハクビシンに比べて気性が荒い(港区) |
足跡の寸法も、農林水産省の資料に数字があります。ハクビシンの前足は長さ5cm・幅4.5cm程度、後足は長さ10cm・幅4cm程度。アライグマの前足は長さ5.5cm・幅6cm程度、後足は長さ6.5〜8cm・幅5〜6.5cm程度です。足跡が残っていれば、定規を添えて写真に撮ると比べられます。
糞が見つかった場所も手がかりになります。屋根裏のため糞は、ハクビシンの被害例として自治体の資料に出てきます。屋外では、側溝や溜まり水の中の糞がハクビシンの特徴として農林水産省の資料に出てきます。畑や竹林にある比較的大きなため糞は、同じ資料ではタヌキの特徴です。
自分でできること:さわらず、記録する
動物が決まらない段階でできるのは、片付けではなく記録です。
- 糞の写真を撮る。定規やペットボトルのキャップなど、大きさの分かるものを横に置く(近づきすぎず、さわらない)
- 糞のある場所(屋根裏、ベランダの隅、雨どい、庭など)と、数、まとまり方をメモする
- 足跡、体毛、爪痕、食べ荒らされた果実やスイカの写真を撮る
- 侵入口になりそうな隙間と、屋根に登れる庭木の枝を確かめる。世田谷区のリーフレットは、ハクビシンは頭が小さく、8cm四方の隙間があれば入れると書いています
えさを断つ対策では、生ごみやペットのえさ・食べ残しをそのままにしないことが、港区と神戸市の両方のチラシにあります。庭木の果実を放っておかず早めに収穫すること、ごみ出しを夜間に行わないことは、港区のチラシに書かれています。
窓口や専門家に頼むこと
捕獲と、糞の後始末は、自分でしないほうがよい場面があります。
捕獲はしない。 世田谷区のリーフレットは、鳥獣保護法に基づき捕獲には東京都知事の許可が必要で、許可のない捕獲や飼育はできないと書いています。酒田市のページも、ハクビシンを含む野生鳥獣は許可なく捕まえられないと書いています。アライグマは、港区のチラシで特定外来生物(外来生物法)とされています。許可の手続きの細かい話は、別の記事で扱います。
自治体の事業の範囲を確かめる。 港区の例では、専門業者による箱わなの設置などの事業がありますが、目撃情報だけでは対象にならず、清掃作業や住宅の穴をふさぐ工事は実施しないとチラシに書かれています。糞の清掃は事業に含まれない自治体がある、と考えて問い合わせるのが現実的です。酒田市は、市ではハクビシンの駆除を行っておらず、駆除・撤去は土地建物の所有者や管理者が行うこととし、個人での対応が難しい場合は専門の駆除業者への依頼を勧めています。
窓口。 東京都のページは、まず各区市町の環境部署や清掃部署などに問い合わせるよう案内しています。お住まいの自治体の窓口は、市区町村の公式サイトで確かめてください。
次にすること
- 糞にさわらず、写真と場所のメモを残す。マスクとゴム手袋なしで片付けない
- 足音や時間帯の手がかりも合わせて整理する場合は、屋根裏の足音はハクビシン?ネズミ?音・時間帯・糞で見分ける方法を参照する
- 記録を持って、市区町村の環境や清掃の担当部署へ問い合わせる。自治体の事業の対象か、清掃は誰が行うかを聞く
- わなは許可なく置かない。侵入口のふさぎ方は、酒田市の案内のように工務店などに相談する
出典(確かめた日)
- 農林水産省 野生鳥獣被害防止マニュアル(中型獣類)「中型獣対策の基本」(加害鳥獣の特定)(2026年11月7日)
- 環境省 近畿地方アライグマ防除の手引き(2026年11月7日)
- 東京都環境局 外来種対策マニュアル 参考資料「アライグマ・ハクビシンに関する主な人獣共通感染症」(2026年11月7日)
- 東京都環境局 外来種対策マニュアル 参考資料「アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマの見分け方」(2026年11月7日)
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト アライグマ回虫による幼虫移行症(2026年11月7日)
- 東京都環境局 アライグマ・ハクビシンについて(人獣共通感染症の記述)(2026年11月7日)
- 東京都環境局 アライグマ・ハクビシン対策 被害を防ぐために(問い合わせ先の案内)(2026年11月7日)
- 神戸市 アライグマに注意!(チラシ)(2026年11月7日)
- 港区 ハクビシン・アライグマの被害防止チラシ(2026年11月7日)
- 世田谷区 都会に住むハクビシン・アライグマの被害対策について(令和6年3月)(2026年11月7日)
- 酒田市 ハクビシンにご注意ください(2026年11月7日)